092.こんな「仕事術」があるんですね【働き方改革、中部も本腰?】

少子高齢化による人手不足や、長時間労働での過労死問題をきっかけに注目を集めている「働き方改革」。政府も旗を振る中、中部地方の企業も本腰を入れ始めた。職場のレイアウトを変えたり、多様な働き方ができるよう工夫したりと、働きやすい環境づくりに知恵を絞っている。

■座り仕事制限で効率化

 コンタクトレンズ大手、メニコン(名古屋市)の本社ビル。社内向け文書の作成に没頭していた山田哲也さん(38)が突然立ち上がり、パソコンを片手に壁際のカウンターに移った。「充電量が少なくなったので」と山田さん。フロアを見渡すと、電源を取るコンセントの大半はカウンター机に取り付けられていた。

 田中英成社長(58)の発案で、昨年九月から本社の大部分で導入した。きっかけはパソコンに長時間かじりつき、集中力が途切れた社員の姿だった。充電のために定期的に立ったり座ったりと姿勢を変えることで、集中力を高め、独創的な仕事もできると考えた。

 加えて「座ったままより健康にいい」と田中社長。今後は愛知県春日井市の研究所でも導入するほか、社員間の会議も立ったままで開く考えだ。田中社長は「立ったままだと会議の時間も減る。無駄な時間を削り、生産性を高める」と意気込む。

■月5日の終日在宅勤務

 自動車部品大手のデンソー(愛知県刈谷市)は昨年十一月、「働き方改革チャレンジ特区」と銘打ち、製造企画など三つの部署で月に最大五日間、終日にわたって在宅勤務ができるようにした。育児や介護に当たる社員向けだった在宅勤務の対象範囲を広げ、ゆとりを持って働いてもらう。

 導入した部署は、午前十時十分~午後三時二十五分の勤務を義務づける「コアタイム制度」の対象外にした。外から自席のパソコンにアクセスして社内会議に参加できる仕組みも取り入れ、好きな時間に好きな場所で働けるようにした。

 昨年十二月中旬、JRのダイヤが大きく乱れた時は、対象の一部の社員が在宅勤務を選択し、無駄なく働けたという。

 有馬浩二社長(59)は働き方改革の背景として、電動化、自動運転など業界を取り巻く環境の変化を挙げる。「変化のスピードについていくには組織の活力が、社員が良い仕事をするには心の健康が必要だ。効率的な労働で生まれる時間のゆとりで、より創造的な仕事にチャレンジしてほしい」。特区では、終業から始業まで一定の時間を空けることを義務付けて健康管理を強化する「勤務間インターバル」も実施している。

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 食器事業で知られるノリタケカンパニーリミテド(名古屋市)の課題も育児、介護と仕事の両立だ。昨年四月から、半日単位だった有給休暇を一時間単位で取得できるようにした。「子どもの学校行事に参加したい」「病院への付き添いで少しだけ休みたい」との意向を反映させた。

 小倉忠社長(66)は「育児や介護で働けなくなるのは本人にも会社にも損失だ」と述べ、情報通信技術を生かして職場以外の場所で働く「テレワーク」を新年度以降に導入する意向だ。

■退社時間を周囲に「宣言」

 長時間残業は健康の悪化に加え、人件費の増加にもなる。三菱電機中部支社(名古屋市)は無駄な残業を減らそうと、退社時間を毎日、周囲に知らせる取り組みを昨年十月から始めた。

 同支社の五百五十人が対象。一日のスケジュールを確認した後、退社時間を記したカードを自席に掲げたり、オフィスの掲示板に書き込んだりするようにした。確認し合うことで互いに残業の削減を努力するようになるが、担当者は「仕事量の偏りも分かり、仕事を他の社員に分担してもらうこともできる」と話す。

 同支社は、始めた前後で全体の残業時間を月間一割強、削減できたとしている。井口明夫支社長(60)は「本年度の結果を検証し、仕事の標準化や効率化も進めることで、新年度はさらに長時間労働を減らしていきたい」と話した。

アールエイチ産業医事務所