164.いろんな「仕事術」があるんですね【植物樹脂で幼児食器、国からダブル受賞?】

金型の設計や製造を手掛ける豊栄工業(愛知県新城市)の美和敬弘常務(45)が今月、経済産業省による「ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞を受賞した。昨年四月には「科学技術分野の文部科学大臣表彰」科学技術賞(技術部門)にも輝いており、同一年度の「ダブル受賞」を果たした。植物由来の樹脂(プラスチック)を金型で成形加工する技術を開発し、製品として幼児用食器を量産化したことが評価された。

 豊栄工業は、美和さんの父敬二さん(77)が一九七〇年に創業した従業員約六十人の中小企業。同社が製造するプラスチックは「ポリ乳酸」と呼ばれ、トウモロコシから取り出したでんぷんと乳酸菌でつくる。最終的には水と二酸化炭素(CO2)に分解されるため、環境に優しい素材として近年、注目を集めている。

 美和さんは以前からポリ乳酸に関心を持っており、二〇〇五年にプラスチック金型の技術コンサルタント小松道男さん(54)=福島県いわき市=の講演を聞いたことで開発に着手した。

 ポリ乳酸は一一〇度前後で固体化するが、金型の中は見えず、固まり始めたかどうか分からない。冷えすぎても縮んで金型にへばりついてしまうため、量産化が難しかった。そこで美和さんは金型に埋め込んだセンサーで温度を測定し、固まると同時に金型から製品を取り出す成形法を考案した。二つの賞は基礎技術の特許を持つ小松さんと共同で受賞した。

 製品化に当たっては「自然素材のプラスチックで、自分の子どもに使わせたい食器を作りたかった」と美和さん。「iiwan(いいわん)」と名付けて、丸みを帯びた幼児用食器を一一年に発売し、同年のグッドデザイン賞を獲得した。値段は一個六百~二千円と一般商品の約二倍だが、安全・安心を求める保護者に好評という。名古屋市内の百貨店など約四十店で購入でき、植物由来のプラスチックへの関心が高い欧州での販売拡大も目指している。美和さんはダブル受賞を受けて「生活製品だけでなく、いろんな産業用にも活用したい」と意気込んだ。

アールエイチ産業医事務所