159.いろんな「仕事術」があるんですね【<されど駄菓子 ~創意で生き抜く~> (番外編)パッケージ ?】

五日から十三日にかけて連載した「されど、駄菓子 創意で生き抜く」では、名古屋と周辺地域の駄菓子メーカーが新たな販路開拓や伝統の職人技により、厳しい経営環境に立ち向かう姿を伝えた。他にも独自のアイデアやこだわりを持つ企業は多く、このうち独特のパッケージで勝負する二社を番外編として紹介する。

 あれはスマートフォン? いいえ、駄菓子です-。共親製菓(名古屋市西区)が、主力商品「さくらんぼ餅」のパッケージをスマホ風に変えた派生商品「たべプリ」(店頭価格三十二円)。二〇一三年に発売したところ、会員制交流サイト(SNS)を通じて評判になった。

 手のひらサイズの長方形の小袋に、スマホアプリのアイコンのようなマークが縦横に十二個並ぶ。SNSを模したり、カメラ型だったり。マークの一つにQRコードもあり、スマホで読み取ると共親製菓のホームページにつながる。四種類あるパッケージは全て図柄が違い、電池の容量表示も異なるこだわりようだ。

 一九七九年発売のさくらんぼ餅は、約一センチ角の餅あめが縦横に十二個並んで小袋に入った商品。たべプリの開発は、人気スマホの米アップル「iPhone(アイフォーン)」が登場した際、インターネット上で「さくらんぼ餅に似ている」と話題になったのがきっかけだった。

 たべプリの発売後、毎年秋に新型アイフォーンが発表されるたびにネットが盛り上がるようになった。ネットが普及した現代社会で、ちょっとしたアイデアが定番品の再燃を呼ぶ起爆剤になる例といえる。安部隆博専務(32)は「たべプリ自体を売るのではなく、さくらんぼ餅を広めるためのツールになれば」と話す。

 一方で、昔ながらの容器と売り方にこだわる駄菓子もある。

 一十珍海堂(いちじゅうちんかいどう)(名古屋市緑区)の定番商品「紋次郎いか」は、コンビニやスーパーの流通で個別包装が当たり前になっても、串に刺したイカをプラスチックのポット容器に百本入りの状態で販売する。一本ずつ取り出して売る様子は、街の駄菓子屋さんの風物詩。かつては立ち飲み居酒屋の店先でも親しまれた。店頭価格は一本二十~三十円。

 紋次郎いかは一九七二年の発売以降、この売り方と甘辛く煮た秘伝の味付けを守り続ける。“昭和らしさ”を好む菓子問屋や駄菓子店側もポット売りを望む傾向が強いという。山下秀樹部長(43)は「大人にとっては懐かしく、子どもにとっては新しい。そんな商品でありたい」と語る。

アールエイチ産業医事務所