129.こんな「仕事術」があるんですね【されど駄菓子 ~創意で生き抜く~(5)?】

熱して粘土くらいの軟らかさになった紅白二種類の棒状の飴(あめ)を、職人が何本も組み合わせて直径約四十センチの丸太状に組み合わせる。まだら模様の塊を二人がかりで勢いよく引っ張ると、延びた飴は直径二センチほどに。機械で輪切りにした断面には「ありがとう」の文字がはっきりと見えた。

 文字や絵を練り込む金太郎飴は菓子業界で「組飴(くみあめ)」と呼ばれ、名古屋市中村区の浅野製菓では年末から春先が受注の最盛期。企業のお年賀や卒業式の記念品に使われることが多い。会社のロゴやキャラクター、校章をあしらい、デザイン性を生かした組飴が、受け取った人に喜ばれる。

 この組飴を身近な存在にしたのが、インターネット通販だ。駄菓子問屋ナカムラ(名古屋市西区)の中村貴男社長(56)は市場縮小が予想される中で「受注生産こそ、中小の卸が生き残る道」と、大量の在庫を抱える経営方針を転換。二〇〇七年、サイト「まいあめ工房」を立ち上げた。

 ネットを通じてオリジナルデザインの飴を受注し、組飴の技術を持つ浅野製菓に生産を委託する仕組み。これまでに七千を超える法人や学校などから、累計一万種類の組飴を受注してきた。個人向けでは結婚式のプチギフト用が多い。ナカムラ広報の藤井佐枝子さん(27)は「景気にも左右されるが、受注は緩やかな右肩上がり」と話す。

 オリジナルの飴は地域おこしにも貢献している。沖縄県粟国(あぐに)村は原料に地元特産の塩を使いたいと、まいあめ工房に打診。ご当地キャラ「アニーちゃん」をデザインした熱中症対策にもなる「塩サイダーキャンデー」を販売したところ、新たなお土産として人気に火が付いた。お土産品を一から開発すると数百万~数千万円の予算が必要だが、まいあめ工房の場合は最低で六万円程度から作れる。初期投資のハードルも低く、導入しやすかった。

 ナカムラから委託を受けている浅野製菓代表の浅野和彦さん(66)は「難しい依頼もあるが、頭をひねってデザインを形にしている」と話す。飴の白は着色するのではなく、機械で練って飴に細かな空気を大量に含ませることで色を出している。時間がたつと気泡が抜けて白くなくなるため、時間との闘い。緊張感の漂う職場だが、組飴の認知度が上がって最近、職人志望の若い女性二人が加わり、工場に活気が増した。

 画一的な商品を嫌い、「世界に一つだけ」の菓子を求める志向は全国的なトレンドになりつつある。チロルチョコの包みを好きな写真や文字で飾れるサービス「DECO(デコ)チョコ」、ガムやラムネ菓子の箱のデザインを変えられる「まいボックス工房」。ネットを経由したカスタマイズを各社が展開している。

 「ネットの普及が販路拡大につながった。オンリーワンの商品を求める声の多さに驚く」。ナカムラの藤井さんは消費者と卸、メーカーの新たな関係に手応えを感じている。

アールエイチ産業医事務所