おやつにぴったりの駄菓子を作り続ける名古屋近郊の中小メーカー。少子化が「国難」の域に達した今、子ども向けの菓子は需要が減り、経営環境は厳しい。それでも商品の開発や改良に挑むものづくり精神は熱く、時流に乗った宣伝や販路の開拓にも意欲的だ。たかが駄菓子、と侮ることなかれ。逆境を生き抜く業界の姿を伝える。
◆老舗とアイドル、コラボ
スポットライトに照らされたステージで若い女性の三人組が歌い、跳びはね、踊る。昨年十二月九日、東京・新宿の地下ライブハウス。約百人のファンを沸かせるたび、駄菓子の小袋をつなげた特製のたすきが三人と一緒に揺れた。
彼女たちは、女優の篠原涼子さんがかつて在籍したアイドルグループ「東京パフォーマンスドール」から派生し、昨年八月に結成したユニット「ぐーちょきぱー」。駄菓子は杉本屋製菓(愛知県豊橋市)の看板商品「まけんグミ」だ。
ぐーちょきぱーは、この日、まけんグミをPRする公式アンバサダーに就任した。メンバーは「ファンの皆さまには箱買いしていただきつつ、私たちも一日一グミを食べます!」と宣言し、笑いを誘った。
まけんグミは一九九〇年発売。グー、チョキ、パーいずれかの形をしたグミが小袋に入っており、商品でじゃんけんができる。
「こんなにマッチしたグループ名があるなんて。声を掛けるしかない」。杉本屋製菓の企画担当、浜口満さん(42)は昨夏、アイドルのイベントでユニット名を知り、すぐにアンバサダー就任を打診。創業百年を超える老舗とアイドルの組み合わせが実現した。
芸能分野との連携は昨年から始めている。東京を中心に、若手ミュージシャンの小型ライブ「まけんグミTHE☆LIVE」を月に三~四回主催。若手俳優を集めた演劇プロジェクト「劇団まけん組」も始動し、昨年末に初演を果たした。今年二月と八月には二千人規模のライブ「まけんグミフェス」を行う予定で、ぐーちょきぱーのほかAKB48らが出演する。
イベントに商品名を出しているが、効果は直接的な宣伝ばかりではない。劇団まけん組では、けいこ場や楽屋にまけんグミを差し入れたところ、気づいた俳優が「おいしい。懐かしい。僕は昔からサイダー味のファンです」と、短文投稿サイトのツイッターで推してくれた。「グミを食べたらファンになった」と反応する観客もいて、購買層の広がりが確認できた。
「出演者の多くがまけんグミを見て『昔、好きだった』と過去形で話す。懐かしんでくれるのはありがたいが、今、食べてほしい」と浜口さん。一番の顧客層の子どもが減る中で、アイドルや俳優の発信力を通じて、幼少時代に親しんだ世代の呼び戻しを図る狙いがある。
まけんグミ人気が高まれば他の企業とキャラクターのライセンス契約を結び、雑貨などに使ってもらう機会も増える。次の狙いは駄菓子そのものを超えたビジネス。浜口さんは「まけんグミをブランドとして売っていきたい。これからも新しいことをやる」と目を輝かせた。
アールエイチ産業医事務所
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